舞台「呪術廻戦」感想

期間:7/15(金)〜7/31(日)/8/4(木)〜8/14(日)

劇場:銀河劇場/メルパルクホール大阪

 

あらすじ(公式サイトより)

辛酸・後悔・恥辱…。
人間が生む負の感情は呪いと化し日常に潜む。
呪いは世に蔓延る禍源であり、最悪の場合、人間を死へと導く。

驚異的な身体能力を持つ高校生の虎杖悠仁は、
自身の高校に現れた呪霊を倒すため、
特級呪物「両面宿儺」の指を飲み込み、
肉体を共有してしまう。

最強の呪術師である五条 悟の案内で、
対呪い専門機関である
「東京都立呪術高等専門学校」へと編入し、
同学年の伏黒 恵、釘崎野薔薇と共に呪術を学ぶことに―。

 

以下、公演中の作品のネタバレ、マイナスな意見を含みます。

感想の総括としては「よく2022年にもなってこんな原作とそのファンを蔑ろにした作品を作れたもんだなあ」です。

わたしは泰江さんのファンです。友人が元々原作のファンなのでアニメをちらほら見せてもらっていたり話を聞かせてもらっていたり、ちょうど舞台キャストが解禁になったあとでジャンプ+で4巻まで無料開放だったときにさらっと読んだ程度でした。自分の東京公演が終わったので*1もう少し深く理解したいなと思い1〜11巻と0巻、ファンブックを買いました。今7巻の途中、背中を見せたくない呪霊(まだ名前が出てない)と戦うところまで読んでいます。

 

わたしの理想の2.5作品は「予備知識がなくても楽しめるが知っていればもっと楽しい」という、原作ファンも俳優ファンも満足できるものです。昨今の2.5舞台は大体1回3時間1万円、娯楽の中でも高い部類なんだからそこは最低限だろと思わなくもないのですが。まあ好みもあるし。そして2.5作品に求めるものは「原作の再現性」「舞台という形になったことで生じる没入感」です。
舞台「呪術廻戦」はひとつの作品として、そこまで悪いとは思いません。ただ“2.5舞台”としては少なくとも、わたしが見てきたものの中ではワーストの部類です。
俳優のファンと原作のファン、劇場に足を運んで席を埋めている以上そこに優劣はありません。ただ原作の人気を利用して人を呼ぶ以上、原作に対する誠意を見せて然るべきではないでしょうか。*2あんなに大きくタイトルと作者名をスクリーンに映しておいて恥ずかしくないのかな。

 

メインストーリーはほぼダイジェスト、かと思えば挟まるアドリブの寸劇(しかも3回)、脚本・演出のキャラクターの理解の浅さ、登場人物のバックボーンや信念など大事なセリフを軽い曲に乗せて繰り返し歌う、そのタイミングも謎、こちらも繰り返し行われる妙なダンス、統合性がなく猥雑で無駄なプロジェクションマッピングに視界を覆う紗幕。変なところで曲がカットインしない2幕は普通に観られたものの、戦闘シーンはただ2人が戦っているだけで漫画の再現にはなっていないな、という印象でした。

 

わたしは小林さんの手がけた他の作品を拝見したことはないのですが得意とする演出は今回の舞台で良く分かったので、ひとえに原作との相性の悪さが問題だったのだろうと思います。今までの作品が好評だったようなので、オファーされた時点でそのご自分の色が求められているのだと考えても無理はないのかもしれません。なのでこれはネルケが彼にオファーをしたのと完成作を見てOKを出したのが悪いです。2.5舞台への新規参入も多数得られそうな人気原作で本当に良くここまで下手を打ったものだなあ。

「原作のどの部分を愛しているか」は人それぞれですが、それにしたってほとんどのファンがシリアスでスタイリッシュな彼らの活躍する姿見たさに足を運ぶだろうことは原作のファンではないわたしにも容易に想像がつくのにな。ハムレット楽しみ〜!って観に行って吉本新喜劇が始まったらそりゃキレるのよ。

 

どなたかが「忙しい人のための呪術廻戦」と仰っていましたがメインストーリーは大体そんな感じです。

ここ省くの!?といちばん思ったのがファミレスのシーン。あそこで呪霊たちを引き連れた夏油(じゃないらしい)が「1人です」って言うことと漏瑚が人を燃やすことで呪霊の残忍さや人間の命への軽視が伝わり、のちの虎杖の「コイツらはどこまで行っても呪いなんだ」がより強く響くので*3省くには惜しいと感じました。あと五条先生が「最強」である以上は漏瑚がどうしても噛ませ犬っぽくなりかねず、彼の強さがぼやけてしまうので領域展開後の「並の術師なら領域に入った時点で焼き切れる」という漏瑚のセリフもいまいち説得力に欠けてしまうのも惜しいです。何も知らない人が見たら漏瑚がドリフぶっ飛び映像と相まって面白噴火おじさんだと思われてしまう。やっぱり「先に示された力を圧倒するほどの力で捩じ伏せる」というのが強さの証明としては分かりやすいかなと思うので、そういう意味でもちょっと勿体なかったですね。

 

そのメインストーリーを削ってまで入れ込まれる小劇場っぽいアドリブコーナー。わたしは好きじゃないけどマダニの部分はまあいいとして、ヒエッヒエの劇場で特に何の思い入れもない俳優が1人でコントさせられている様、胃が痛い…。これから大阪に来るかと思うともっと胃が痛いです。ヤジ飛んだらどうしよう(発声禁止) でもそのせいでメインストーリーが割を食ってるので歓迎もできないし面白くなければ笑えないしで、こういうとき矢面に立たされるのはいつも俳優だよなあと思います。良くも悪くも評価がダイレクトに伝わっちゃうし。あと段ボール。陀艮だって大事な仲間なのになんでわざわざそんなことを?雑な扱いが面白いみたいなのは平成までですよ!!

 

歌詞がほとんど大事なセリフの転用と繰り返しなので、これ以上のことが書けないほどキャラクターのことを良く知らないんだな…と思いました。特に野薔薇の「スカウトされたらどうしよう」は飽くまでも田舎出身のお上りさん的発想であって夢見る少女みたいにされてるのが良く分からなかったです。「(田舎が嫌で東京に住みたいがために命を)懸けられるわ」「私が私であるためだもの」の清々しい表情が素敵だったのでそっちをフィーチャーしてほしかったなあ。同じく野薔薇の「学ランでの特訓がしんどい」がメインな感情のはずの場面で可愛いジャージのことしか考えてないみたいな歌詞にされた上に何故か真希さんとキャットファイトを始めるの、ええ〜??「釘崎野薔薇」じゃなくて「女」というキャラクターを見ているのかなという印象でした。

あと学長との面談というか、「自分が呪いに殺された時もそうやって祖父のせいにするのか」「……アンタ嫌なこと言うなぁ〜」も大事なところだと思うので歌でふわっとやらないで欲しかったな〜。というか普通あそこをあんな手拍子パチパチコミカルミュージックにするか?

「苗字で呼ぶな!」と言ったあとに高らかに自分の名前をフルネームで3回も歌う真希さんも意味が分からないし(自分の苗字は言いたくないし聞きたくないイメージ)原作で同じセリフを言っていた伏黒よりも近しい存在の真希さんが狗巻のことを「語彙がおにぎりの具しかない」と言うのは揶揄にも聞こえかねなくて、ちょっとそれはそのまま転用しすぎなんじゃないの!?そういうキャラクター個人にも関係にもストーリーにも興味がないのが透けて見えちゃうと特にファンじゃなくても盛り下がっちゃいますね。脚本家と演出家もオーディションしろマジで。公演前日にアップされたインタビューで演出家の方が「原作をそのままやっても面白くない」と仰っていたとありましたが、原作そのままを面白く舞台で表現できない人の言い訳だと思います。でも人には得手不得手があるのでそれを正しく見極めてオファーしなかった方も悪い。

 

元々作っていたものを流用したようなキャラクターっぽさのない曲、歌声を掻き消す楽器、今?というタイミングで始まる前奏。曲自体が昔のJ-popっぽくて元の世界観に合わないと言えば合わないけど悪くはないので、振り付けとタイミングさえ合えばまだ良かったのかも。セリフで余韻を持たせて決めてほしいところを歌で流すので、キャストの方々のせっかくの歌唱力がほとんど活かされていませんでした。エンディングではハミングしながらゾロゾロと出てきた皆が天井に両手を伸ばして〜完〜  いやそこは歌わんのかい!!!!!

 

本当に振り付けがダサい!!ステップもダサい!!そして繰り返す!!!エンドロールで振り付けの方が2人いらっしゃると知ってびっくりしました。1人しかいない舞台でももっとバリエーションある。伏黒が曲中で津美紀について語るとき表情は切なそうなのにバックダンサーと共に激しく謎のダンスを踊っていて、首の上と下で別の話をしてる…と思ってしばらく混乱しました。あとなんか五条先生がくねくねしてた。

 

映像については開演前の焚き火と海からもう意味が分からないし、俺はこんなに弱かったのか…の曲で血の海に浮かんでは沈む頭蓋骨(誰?襲われた囚人?)が紗幕に映されたたくさんの光に覆い隠されて良く見えないし(そもそもあんな絶望…みたいな曲でなんで光?)、赤字がバーッと大きく映し出されるのは昔のフリーホラーゲームみたいだし、「これが死か!」って衝撃を受ける真人の後ろにささやかな““死””の文字が出てくるのはダサいしで、ことごとくどうして今そんなことを?と首を捻りたくなるようなものばかりでした。いや““死””自体は原作にもあったけどあんな明朝体で変な線に囲まれて…変なの…。

 

 

わたしが観たのは15日の配信と17昼夜,18昼公演なので少しずつ変わっているかと思うのですが、以下その時点でのキャストの感想です。キャラクターに関してアニメの記憶はあんまりないので(1人で映像を見られないタイプ)漫画を読んだときの印象に則っています。

 

虎杖

昨年末に観たナルステのサスケで声の圧と迫力がすごかったので期待していたのですが、ちょっとイメージとは違ったかも。確か原作者の方が「苦手なタイプを主人公にした」とどこかで仰っていたかと思うのですが、佐藤さん演じる虎杖のことは別に苦手じゃなさそう。知らんけど。虎杖よりも宿儺が受肉したときの演技の方がハマっているように見えました。

「俺はこんなに弱かったのか」の部分は嘆きや悔しさに近い感情だと思っていたのですが、なんかめちゃくちゃ絶望していた。ミュージカルにする上で曲に緩急をつけたかったのかな。曲の終わりの方でセンター上手寄りから「もう行って大丈夫ですかね…」みたいな感じでソロソロと出てくる特級呪霊がツボです。でもあの曲自体は佐藤さんの声や歌い方に合っていて何も考えずに聞くと好き。

カーテンコールのイジリの件でちょっと言われてるみたいですが、そもそもカーテンコールでキャラステイさせるような演出家なら本編があんなことにはなっていないので…。でも本編がまともならそこが引っかかるって人も少なかったんじゃないかなあとも思います。

 

伏黒

想像より元気そうだった(お見舞い?)。今まで声を荒げるようなキャラクターを演じてらっしゃるところを見たことがなかったのでかなり新鮮でした。読む際も泰江さんが演るんだ…の気持ちで読んでいたので邪念が混じっちゃってこれが世間の伏黒像と合致しているかは分からないのですが、「クールぶってるけど感情が表に出にくいだけでコントロールをしきれない未熟さを持つ子ども」みたいな印象を受けました。高専がコントロールしなくていい場所なのかもしれないけど。陽のパワーはなんかめっちゃ出てたけど。ハッ!

個人的に好きなのは「なんとかしてください!」の言い方です。「どういう状況?」って現れた五条先生を見て一瞬考えるように下を向いてパッと顔を上げるのも、五条先生の力と彼は自分の頼みを聞いてくれるという2つの信頼が表れているようで。あと「あの子が死んで悲しむのは私だけですから」でグッと自分の脚に爪を立てるところも好きです。彼の信念において正は助けるべき人ではないけど、それをその人の身内から客観的な意見を突きつけられたときの罪悪感や何もできなかった(しなかった)無力感かな〜と勝手に解釈しています。あと「俺は不平等に人を助ける」の最後の構えて赤いライトに照らされてるときのバッチバチの表情がとっても好き。俺の可能性!!の笑顔についてはなんかもう良く分かんないのですが、腰に当てる手の位置まで計算していた人がなんの考えもなしにやるとは思えないので見解をどこかで聞けたらなと思っています。歌ってるときの表情(というか口角)はかなり気をつけてるように見えるんだけどな〜。配信のときは正直めっちゃ笑ってるけどいいのかな…って思いました。

野薔薇の「喜べ男子、紅一点よ」で真顔のまま眉だけ顰めたり踊り出す2年の先輩たちにこれも真顔のまま首だけ引いてびっくりするのもかわいい。「歌うの自体が解釈違い」って言ってる人もいたけど2巻のカバー裏で伏黒もカラオケ行っとるやろがい!!!

 

野薔薇

いい!!歌もダンスも上手いのにトンチキボックスを踏まされている…。沙織ちゃん私東京に来たよ曲が良かったな〜と思うけど登場した瞬間に深刻すぎるオーラを出すのも野薔薇っぽくないかなという気もするし難しいですね。歌声が伸びやかで気持ちいいしセリフ回しも好きです。特に「オマエ顔覚えたからな」が好き。どうしても伏黒と一緒に出てくることが多いのでお顔をあまり見られないのですが、声の表情がコロコロ変わってなんだコイツ感と憎めなさが両立しているところが読んだときに感じた印象まんまでした。口が悪いながら素直でいいよね。

 

真希さん

☆禪☆院☆真☆希☆なんやねん。身のこなしが軽やかで綺麗!以前別の舞台でも拝見していたので楽しみにしていたのですが、期待以上でした。ビジュアルよりかわいいし風格がある。もう少しカラッとしていて野薔薇と取っ組み合いなんかしないイメージですが、これは歌詞と演出が悪いと思います。

 

狗巻

かわいい〜。曲中の合いの手のようなおにぎりの具めちゃくちゃかわいかった。声や言い方もかなりイメージ通りでした。伏黒が野薔薇に投げつけられたスリッパを普通に押しつけられてたのもかわいかった。先輩やぞ。狗巻ではないし映画のシーン自体はアレなんですが、指名待ちの五期の異様に澄んだ瞳がツボです。なんであんな果敢な顔ができるんだ。

 

パンダ

パンダ。エンディングの紙吹雪を拾いそうで拾わないキャラクターNo. 1(拾いそうで拾うNo. 1は伏黒)。「パンダに持たせてる」「ムキ」のテンポと言い方が好き。どうでもいいんですが寺山さんを見る度にいつかのドリームライブでゲストに来たときご自分たちが出演されていたときの映像を見ながら「これが人生のピークです!」と声高々に言っていたのを思い出します。爆死するヒロインのオープニングの曲とダンスを自作していたの仕込みがすごすぎた。2年の先輩たち好きなので京都姉妹校交流会も早く見たいです。違う演出家で。

 

ナナミン

あのスーツだと尚スタイルの良さが際立ちますね。あと横顔の額の山がすごかった。重箱の隅をつつくようで恐縮ですが術式開示の例を虎杖に見せるときに首の辺りを切っているように見えるので、せいぜい2:8かなあ…と毎回思ってしまいます。倒れた虎杖を前に急に大きい声出し始めるのもちょっと笑ってしまう。成人男性の大声に弱いので…。

パン屋さんでの1件の演出は好きです。曲についてはわたしからはなんともという感じなんですが、連番した原作好きフォロワーが曲の始まった途端に固まってたのがリアルでした。ナタをマイクにするのは…って意見も結構見たんですが、ラケットはマイクになるからなあ…(?) 興が乗ったら武器もマイクになりかねないんじゃと思ったけどナナミンは万が一歌うことがあっても興は乗らないですね。ミュージカルでの曲中ってたまにキャラに催眠でもかかってんのか?みたいなことあるよね。殺陣が綺麗でした。

 

伊地知さん

良い意味で演出にもキャラクターにもハマっていたと思います。順平の対応について蝿頭の籠を右手左手に持ち替えながら説明するところが好き。初めて見る方だったのでほとんど存じ上げないんですが、普段小劇場に出てらっしゃいそうな器用さだな〜と思いました。五条先生の僕には夢があるんだ曲で目と口を真ん丸にしてホホウ!って顔して聞いてるのがかわいいです。

 

硝子さん

目の下が暗くないからかなんと言うかこう、健康的な色気を感じました。喋り方が男子生徒の夢みたいですごい。けど虎杖に「お前が殺したんじゃない」って言うシーンではちゃんと律する口調が“教職者”らしくてとても良かった。先生じゃなくて高専所属の医師だけど。この辺の役職みたいなのがいまいち曖昧です。保健室の先生ではないらしい。

石井さんの兼ね役である順平の母親役はもう雰囲気からガラッと違ってすごい!あっけらかんとして豪胆で、でも他人の機微に優しく触れられる人。そりゃこんなお母さんが側にいたら殺しは躊躇うし、殺されたと思ったら何もかも恨んじゃうだろうなという説得力がありました。映画のシーンはもういいです。あと本当にネギが絶妙に似合わなかった。

 

真人

スゲー。2幕はとにかく真人を見てれば楽しかった。変なタイミングで歌わないし。残忍で無邪気で異質で茶目っ気があって、すごく魅力的でした。せっかくの無為転変が演出としてあんまり活きていなかったのがちょっと残念です。こここそお得意の映像を使って補ってもよかったのでは?と思ったら補われたのは““死””でした。成長途中の真人が「なんて新鮮なインスピレーション!」って衝撃を受けている瞬間の、こちらもビリビリと肌で感じるようなある種の熱量が絶対いらん映像で笑いに塗り替えられたときの気持ち。2幕は劇場で初見だったのであの映像が目に入って普通にめちゃくちゃウケてしまいました。何? このシーンに限りませんが舞台の全景を1枚の絵として切り取ったときの、悪い意味での情報量の多さが仇となっている気がします。すごく言葉を選ばずに言うと、親が目を離した隙にガキが料理を取ってきたホテルビュッフェの皿って感じ。

真人は1幕の終わりに上手から出、順平と肩を組んで下手へと捌けるときに蕩けるような笑顔を客席に向けて来るの、ウワ〜!!って引っくり返りそうになります。わたしはこういう男が大好き。男なんですか?

ナナミンとの激しいアクションの最中に舌を出したり顔芸(って言っていいのか分かんないけど)の再現か口元を恐らくわざと歪ませたりするのが本当にすごい。あれだけ手足をブン回しながら毎回違う表情を作れるの、脳が2つあるとしか思えない…。曲が真人っぽくないながら歌がとても上手いのですごくハッキリと聞こえる。楽器が掻き鳴らされてないのもあるかも。「食べるように」で舌を出していたのが好きです。

 

順平

上手い。ミミズ人間2について弾かれたように話し始めるところがめちゃくちゃオタクっぽくてオオ…と思います(引くな) 蹴りまくってるときのアクションが巧い人のそれで目を惹きます。ダンスも得意としてらっしゃる動きなのか綺麗なんだけど如何せんワンパターンで、もっと技量が引き立つ振り付けがあるだろうに…と思ってしまいます。

彼がイジメられていたという情報が舞台では後出しなので「めちゃくちゃ被害妄想を拗らせてるやつ」に見えかねなくて、どうしてこんな構成に…?先生を追い払ったあとの「嫌いなやついつまでも家の前にいてほしくねーだろ」という虎杖のセリフはかなり彼の人柄が表れているところだし、順平が心を開くきっかけになる1つだと思うので残しておいて欲しかったですね。確か18昼公演で先生のズボンと一緒にトランクスまで脱げちゃってた。

お母さんが死んじゃって順平の様子が一変するのすごかったです。憎しみの表現も虎杖に拾われて覗いた悲しみもひしひしと伝わってきました。「母さんも僕も人の心に呪われたって言うのか」の慟哭も凄まじかった。「真人さんは悪い人じゃないよ!」のあとの「悪い…人…」は今までの真人の行動を思い返した順平のセリフかと思ってたんですが、舞台だと真人のセリフになってましたね。それでより愚かさが強調されていたように感じます。「君が馬鹿にしている人間のその次位には馬鹿だから」にかかっていてそれもアリだな〜と思いました。順平の形を変えられたところはもうちょっとこう、ショッキングというか「取り返しのつかなさ」みたいなのが一目で分かるようなものが欲しかったですね。舞台だとどうしても難しそうだけど。

 

夏油(じゃないらしい)

声優っぽい声やセリフ回しをする方だな〜と思いました。分からないけどアニメに寄せてらっしゃいそうな印象。ところで2幕初めの呪霊たちの曲ってあれで良かったんですか?

ストーリーの都合上、印象的なシーンこそ少ないもののしっかり存在感があって良かったです。ミミズ人間が出てきて「長くなるだろ!」「長くなるでしょ?」のシーンは正直ダルいんだけどこれって脚本と演出どっちの罪なんですか?もう長くなってんだよ。歌がお上手だしあの声のまま歌えるのもすごい。

 

漏瑚・花御

好き!2幕はとにかく真人を見てれば楽しいし1幕は伏黒と漏瑚を見ていたら楽しいです。ちゃんと表情豊かですごく素敵。五条先生に「手出して」って言われたときの呆れたような表情が好きです。よく見ると俳優さんの目線であろうスリットが漏瑚の目の真ん中あたりに見えるのですが、瞬きはどうやってるんだろう。漏瑚については大体上に書いちゃいましたね。人燃やすところ見たかったな〜。

かわいかったのに…って真人と夏油(じゃないらしい)に言われて一瞬ちょっと満更でもなさそうな反応をするのがかわいい。声の厚みも好きです。

花御はせっかく造形が凝ってたのにほとんど出番がなくて残念でしたね。仕方ないっちゃ仕方ないけど…。花御の術式の映像は好きです。確かにあれはホッコリしちゃうかもしれない。「喋ってる言葉は違うのに意味だけ分かる」はずがなんか2幕の頭でめちゃくちゃ固有名詞を喋っていましたが、漫画でも花御の言っていることが頭に響いてるみたいな感じだったのでそういう変換がいつの間にかされていたのかもしれない。

 

宿儺

ベテランで貫禄出してくるのかなと思っていたので割と意外なキャスティングだったんですが、納得のアクションでした。エフェクトかかってるけど声も抑揚も諏訪部さんに寄せてらっしゃる気がします。

宿儺関連で気になることは特になかったかも。丸呑みしてる指の素材が何でできてるのかなくらいで。強いて言うなら伏黒の布瑠部由良由良で興味を持ったというのがちょっと分かりにくく、伏黒の歌と踊りに満足したみたいになってたのがちょっとシュールでした。あと「宿儺にとって七海が死のうと真人が死のうとどうでもいい」みたいなのは入れておいて欲しかったけど、天の声として宿儺に言ってもらうのも変だし(本当にどうでも良ければわざわざ主張しないので)あれで良かったのかな。

 

五条先生

歌が上手い!上手いんだけどあの謎のセットを潜って大移動しながらの「僕には夢があるんだあああああ(大ビブラート)」がどうしても面白い。いや三浦さんは与えられた仕事で最大限にお力を発揮しているだけなんですけど…。発声が明瞭でイメージより軽薄さが薄かった印象だけどこれはこれで。秘匿死刑についての説明がラップなの全然頭に入って来ないから勘弁してほしいです。振り付けも変だし…。

VS漏瑚で黒い紗幕の向こうにいるとき彼の服が黒いので顔だけ浮かび上がって、フォロワーがそれを「グリーンバックに緑の服着て来た人」と評していたのが忘れられません。素顔が出るシーンはカーテンコールを合わせても5分くらいしかないのにちゃんとカラコンも睫毛を真っ白にされているのも芸が細かくてすごいな〜と思います。今回メイクは自前とのことでしたがあんな白くするマスカラ日本に売ってるのかな。ネット?目隠しの布がブカブカなのが若干気になりますが擦れるとメイク崩れちゃうからかな〜。底知れない強さに説得力があって良かったです。

 

 

ここまで散々言っておいてなんなんですが結構楽しんではいます。ただわたしにとって「面白い舞台」ではなかったし、繰り返しになりますが2.5舞台としてはワーストの部類だと思います。こんな人気の原作で舞台化していない作品ってもう他にほとんどないし、舞台への新規参入も見込めるはずなのにどうしてこんなことに…?

ネルケの傾向的にポップで楽しくて歌と踊りがあって〜みたいなのがしたいのは分かるんですが(不景気のときは明るい作品が流行るって言うし)、駅に広告を貼り出すよりも大多数が求めるようなものを作った方が長期的な利益が見込めるんじゃ。いやデータを持ってるわけじゃないので知りませんけど。特に興味が湧かなかったので演出家の方の経歴は調べてないのですが一貫して「少年漫画らしくなさ」を感じたので、あんまり慣れてらっしゃらないのかなーという印象でした。見当違いだったら申し訳ないんですが曲が入るタイミングが変なのも失礼ながらセオリーが良く分からなかったのからで、それでご自分の手癖が優先になっちゃったのかなと思いました。本当に采配ミス。テニミュ4thのルド吹で「この人(演出家)話を聞いてくれる気はあるけどテニスの王子様を読んだときの感覚が絶望的に合わないんだ…」と感じたのが記憶に新しく、わたしが原作を読んで好きだと思って大事にしていた部分が踏み躙られたとすら思いました。なので正直それと混同して怒っている節はあります。もちろんどちらの舞台も良かったと思った人を否定したいわけではないし、わたしも何もかもが悪かったと思っているわけでもないし、劇場などで反応をダイレクトに感じるのはキャストなので申し訳ないなとは思うんですが。

でも呪術はこの1週間でキャストの演技もどんどん変わって演出も追加されたっぽい?と聞いているので、それを期待しつつ無事公演が最後まで駆け抜けられることを祈ろうと思います。早く観たい!楽しみです。

何についてもそんなに詳しくないので、ここ間違ってるよ!っていうのがあれば教えてください。調べてから必要であれば追記にて訂正します。では続きを読んで来ます。

*1:結局大阪公演が中止になる前にと東京増やしました

*2:俳優への誠意ももちろん必要なんですがそこは表出する部分ではないので…。

*3:虎杖はファミレスにいないけど